基礎知識

2022.06.24

予防保全のコツは? 事後・予知保全との違いを知ってロボットを保全しよう


設備保全は、各産業の生産性向上における重要なテーマの1つです。安定的な設備の稼働には、適切な保全計画の策定が欠かせません。日々の業務に追われるあまり、後回しになることも多い「予防保全」について、ロボット分野での予防保全のポイントとともに解説します。

 

 

「予防保全」とは?

日常点検や定期点検をはじめ、部品の交換や復旧などを行う設備保全は、生産活動に必要な設備の安定稼働が目的です。

 

 

設備保全は事後保全と予防保全の大きく2種類

設備保全の方法は、「事後保全」と「予防保全」に大別されます。

 

● 事後保全:設備の停止や機能低下があった際、迅速に原因を特定し、部品交換や修理・復旧を行います。
● 予防保全:故障や設備の停止を未然に防止するため、事前に立案した保全計画に基づき、稼働前の日常点検や設備の劣化状況を確認する定期点検、部品交換、整備・修理などを実施します。

 

予防保全は、事後保全では回避できないダウンタイムを削減して安定的な生産を維持し、事前に適切な保全を行うことで設備の長寿命化を目指します。

 

 

予防保全と予知保全の違い

予防保全は、TBM(時間基準保全)やCBM(状態基準保全)といった保全基準によって分類されます。

 

● TBM:状態にかかわらず、耐用年数に応じて定期的に部品を交換し、故障を防ぎます。
● CBM:設備の状況を常時監視し、故障の兆候がある部品を交換して故障を予防します。

 

TBMを主とする予防保全から進化した「予知保全」は、CBMの考え方に基づく保全方法です。

 

● 予知保全:IoTで設備を監視して故障の兆候を検知し、故障を防止します。

 

予知保全は、故障の予兆を検知したタイミングで部品交換を行うため、定期的なメンテナンスを最小限に抑えることができ、設備保全にかける作業時間を削減することができます。

 

 

なぜ予防保全が重要なのか

生産活動の継続には、設備の安定稼働が欠かせません。稼働中に不具合や停止が起こると、復旧まで生産活動がストップしてしまいます。故障に気付かず稼働させ続けた結果、不良品ができるリスクもあります。

設備の稼働率・生産性の維持を考えるのであれば、いかに復旧を急いだとしても事後保全では足りず、予防保全で可能な限り事前に故障を食い止めることが不可欠です。復旧不能な破損や大規模な修理によるコスト増加の回避、設備の長寿命化にも寄与します。
設備保全の主流は、事後保全から予防保全へ移り、さらに予知保全へとシフトしています。

 

 

ロボットの予防保全で押さえるべきポイント

次に、ロボット分野における予防保全の課題と円滑な運用のポイントを解説します。

 

 

ロボットの保全業務における課題

ロボットの保全業務で今後求められるのが、熟練工に頼らない仕組みの構築です。設備保全はもともと熟練工が担う業務でした。しかし、高齢化による熟練工の減少やロボット技術の高度化による専門人材の不足、経験の浅い作業員の増加などにより、人材の確保が難しくなっています。
IoTやAIを活用した予防保全・予知保全は、こういった人材不足も背景に普及が進んでいます。

 

 

ロボットの予防保全を円滑に運用するために

産業用ロボットと協働ロボットでは、予防保全においても違いがあります。予防保全の運用には、その違いに応じた保全基準と保全計画の策定が必要です。

 

保全基準と保全計画の策定

ロボットの予防保全の適切かつ効果的な運用を支えるのが、TBMやCBMといった保全基準と保全計画の策定です。保全計画は、ロボットの種類や仕様、状態などに適した保全基準に基づいて立案します。点検・監視・診断内容や部品交換の周期・基準などを定め、計画の実行後は部品交換や調整、劣化状況の履歴を残して計画の改善を図ります。

 

TBMは計画的な保全を行いやすいものの、過剰な部品交換で余分なコストがかかるリスクもあります。一方で、CBMは人の点検作業時間を最低限にしながら、不具合の予兆がある部品だけの交換をすることで、メンテナンスコストの削減が可能です。目視による点検が加わるTBMは熟練度により結果に差が出やすく、IoTによる監視を行うCBMは、熟練度によって変わらず評価基準が一定であり、評価がしやすい特徴があります。

 

以上からも、ロボットの安定稼働とコスト削減の両立を図るには、CBMに基づく予知保全も取り入れた予防保全で、各ロボットに適した保全計画を立案するのが望ましいと言えるでしょう。

 

 

予防保全における産業用ロボットと協働ロボットの違い

産業用ロボットは、稼働中に安全柵で囲われることから、部品の劣化などを発見しづらい面があります。そのため、定期的な点検とメンテナンスが不可欠であり、その分コストが増加しやすくなる傾向があります。検査等の業務には、労働安全衛生規則に定められている「産業用ロボットの特別教育」を受講した技術者も必要です。

一方、協働ロボットは「ユーザー自身で触れること」を思想として生まれました。技術の進歩とともに、メンテナンスの頻度や交換する部品は減少傾向にあります。定期的な検査は推奨されているものの、不具合が起きない限り部品交換は基本的に不要なことが多いです。各軸の稼働状況を常にモニタリング・解析できる機能もが搭載され、予知保全による安定した稼働を実現しやすくなっています。

 

▼産業用ロボットと協働ロボットの具体的な違いはこちらの記事で詳しく解説しています。

協働ロボットとは? 活用事例とともに徹底解説!

 

 

ロボットの戦略的な保全計画の実現に向けて

故障しづらく、メンテナンスの負担が少ない設備を導入すること自体が保全戦略とも捉えられます。協働ロボットはその選択肢の1つとなり得るのではないでしょうか。

ここ数年、海外製含めて多数のメーカーが販売を開始している協働ロボットですが、メーカーや販売店によっては以下のような事態が発生しているのも実情です。

 

● 技術的なサポートが英語のみ
● 質問への回答までの時間が長い
● 時差があって日中の回答を得づらい
● 交換用の部品が入手しづらい
● そもそも修理対応をしていない

 

事前にメーカーのサポート体制を調べておくことも、保全計画の立案では重要と言えるでしょう。

 

Doosan Collaborative Robotsは、日本語での技術サポートに加え、不具合の対応や修理もすべて国内で行うなど、お客様が日本で安心して使用できる環境を整えております。稼働状況を監視する機能や閾値を超えた時のアラートといった予知保全につながるソフトウェアもご提供が可能です。

 

▼Doosan Collaborative Robotsのアフターサポート体制についてはこちらのページで詳しくご紹介しています。

Doosan Collaborative Robotsのアフターサポート体制

 

協働ロボットを取り入れた予防保全・予知保全にご興味のある方は、ぜひ弊社までご相談ください。

 

 

 

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